水の上で暮らす~日本でも船上生活/水上生活は可能?

欧米の都市生活者の間では、「船で暮らす人」「船で暮らしたい人」が増えています。

海に囲まれ、川や湖が数多く点在する日本で、「水上生活」「船上生活」することは可能なのでしょうか?

ロンドンとパリにおける船上生活の事情を踏まえて、日本での可能性を探ってみました。

目次

水の上で暮らす~日本で船上生活は可能か?

日本でも今、キャンピングカーなど車で移動しながら暮らす、「バンライフ」と称するライフスタイルが注目されています。

バンライフ同様に、船を所有し移動しながら暮らすことは可能です。

つまり、許可されたキャンプ場や駐車場に停めた車で寝泊まりしながら移動して暮らす、それと同じように、マリーナなど許可された場所に係留した船舶に寝泊まりしながら移動して暮らすことは何ら問題ありません

でも、生活=住民登録をすることは、現在の日本では不可能です。

自分で借りている、または所有する駐車場であっても、そこに停めたキャンピングカーで住民票を取得することはできません。

同じように、自分で借りている、または所有する係留地に停泊させた船でも、住民票は取れません

ただし、違法性が無いことと正統な権利であることを主張した裁判をすれば、勝てる可能性はあります。

何故なら、大阪で公園に住民登録をしようとした方が、転入届けの受理を拒否されたため、訴訟をおこし、裁判の結果、住所と認定された判例があるからです。

どうしても!という方、また、日本にあたらしいライフスタイルを!という思いが強い方は、是非訴訟し裁判で勝訴してください。次世代のヒーローになると思います。

今の日本では不可能ですが、ロンドン、パリでは、水上生活者(洋上生活者)が増えていると言います。

ロンドンとパリの水上生活(洋上生活)の実態を調べてみたので紹介します。

イギリスの「ハウスボート」生活

EC離脱の影響もあって、ロンドンの住宅価格は10年前と比較して2倍近く上昇しています。

賃貸物件でもワンルームで月額1,500ポンド(約28万円)を上回るのは当たり前。(2024年4月現在、1ポンド192円)

電気代や物価も高いロンドンでは、平均所得者であってもシェアハウスを余儀なくされています。

「家賃を払うためだけに働いているようでバカバカしい」ということで、ここ数年で生活しやすいベルリンやワルシャワへと移住した若者も少なくありません。

そんな住宅価格の高騰が続くロンドンで生き残るすべを模索する若者たち、特に、俳優や医者の卵、学者、弁護士などの間で「ハウスボート」の需要が高まっています。

7フィート(約2.1m)という規定サイズの中古ボートは約7000ポンド(約103万円)。2年ローンで月々4万円弱。
※ 木造船、多少の修復が必要なレベル

船上生活に必要な年間のライセンス料は1000ポンド(約14万円)で、1カ月の家賃よりもはるかに安く抑えられるのです。

でも、これもすでに過去の話。。

近年の住宅不足やインフレもあり、ハウスボートの価格も値上がりしています。

  • 伝統的な木造船:200万円~500万円程度
  • 鋼鉄製船:500万円~1,000万円程度
  • 現代的なハウスボート:1,000万円~数千万円

※ サイズによっても異なりますし、修復が必要か、居住可能レベルかによっても異なります

他にも、費用はかかります。

  • 係留費用:年間数万円~数十万円
  • 船舶保険:年間数万円程度
  • メンテナンス費用:年間数万円~数十万円

係留費用は、もちろん係留する場所や、船の大きさによります。2週間ごとに場所を移す必要があり、同じ場所に2週間以上停泊する場合は、住所が与えられる代わりに税金の支払いが発生します。

メンテナンス費用や保険も、船の状態や大きさなどによっても異なります。

電気は、ソーラーパネルが設置されていますが、必要に応じて発電機も使用。

下水処理はトイレの水のみで、その他は溜まったら決められた下水処理ポイントに廃棄。シャワーや洗面所の水は垂れ流しになるため、植物性の洗剤のみ使用が許可されています。

それなりの手間や費用もかかりますが、それでも地上の物件よりはまだ安く、変わらずの人気ぶりです。

パリの船上生活者「Pénichard(ペニシャール)」

船の底が平らになっていて、長さが最大で約38.5m、幅が最大で約5mの船を、「Péniche(ペニッシュ)」と言います。

パリには、約1,200隻のペニッシュ(船型住居)があると言われています。

大きく分けると2つのグループに分かれます。

  • 個人所有でペニッシュで暮らす 〜 約70%
  • 企業等所有で観光客向けの宿泊施設やレストランとして利用 〜 約30%

そのペニッシュで暮らす人を「Pénichardペニシャール)」と呼び、パリには約850世帯、3,000人程度のペニシャールがいるそうです。

ペニッシュで暮らすことはパリジャンの憧れ。

豪華クルーザーでモナコで暮らすのは夢でも、ペニッシュ暮らしは手の届く現実的な暮らしなのです。

ペニッシュには郵便も配達されるし、一般道から遠くなければ水道や電気も引くことが可能です。

距離的に無理な場合は、電気は発電機またはソーラーパネルを設置し、水は停泊所からもらうか、川や運河から引き、船内の浄水装置を通してから使います。

ガスはボンベを購入。生活汚水は船内の浄水設備を通してから川や運河に流します。

ペニッシュは不動産物件と同じように取引されて、中古3LDKレベルで4~5千万円。別途、停泊所代、10年に一度義務付けられている船のメンテナンスが必要です。

それでも、パリで同じ広さのアパートよりは安く、何よりも環境が良いので人気は高まる一方だそうです。

ちなみに、船の停泊はVNF(Voies Navigables de France)によって認可され、停泊許可はVNFを通さずに譲渡することはできません。

新規に停泊許可を待つ人は多く、現在500隻近くが認可待ちの状態だそうです。船を買う以前に、停泊が認可されるのかをVNFに確認することが必要なのです。

なお、ペニッシュを運転するのであれば専用の免許が必要です。また、川か運河のみでしか運転(運航)できないので、海には出ることはできません。

日本での水上生活(船上生活)

日本にはかつて、日本海沿岸や九州、そして瀬戸内海一帯に「家船(えぶね)」と呼ばれる漂流漁民がいました。

本拠地を中心として周辺海域を移動しながら一年を送り、漁業を営み、1週間から10日おきに近くの港で物々交換に近い交易をしていたそうです。

明治以後、規制が厳しくなり、昭和40年頃には陸上への定住を余儀なくされ、以来、日本では水上生活者(船上生活者)は消滅しました。

現代においては、猟(漁業)のための水上生活(船上生活)ではありませんが、週末など休暇をクルーザーで過ごす人、中には水上(船上)でテレワークする人が増えています。

水上生活(船上生活)は、クルマでの移動生活(バンライフ)や、地方に移住しての田舎暮らしと同様に、過密化や高層化が著しく都会からの脱出先として、これから更に注目され人気になると思います。

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この記事を書いた人

アラカン夫婦の備忘録

早期リタイヤして地方移住〜田舎暮らしをした経験と、その後の暮らしで学んだことや役立つことを、これからシニアになる全ての人たちに向けて発信しています。
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