投資用に古民家や築古物件を専門に売買する不動産事業者が物件を選ぶ際の注意点を紹介します。プロの業者は当然基準が厳しいので自宅用物件を探す際にも大いに参考になるかと思います。
プロに学ぶ不動産投資視点で築古空き家の購入方法
空き家不動産投資の投資対象は「空き家」です。
投資基準でいう「空き家」は、「築古」「古家」「ボロ家」「廃屋」等、格安で購入できる物件が主な投資対象となります。まずはそんな投資に適する物件探しから始まります。
※空き家不動産投資についてはこちらの記事で解説していますが、今回は具体に購入方法や注意点について解説します。
購入手順1:物件情報収集
空き家物件の情報を得るには、以下の方法があります。
- ネット(不動産会社や空き家バンク等)で探す
- 現地の役場や不動産屋に紹介してもらう
- 現地で足(目と耳)で探す
しかし、ネットにアップされる物件はごく一部です。投資用物件を狙っている人たちは現地の不動産屋などから直接情報を得ていますので、投資に有利な物件はなかなかネットにアップされません。
なので、現地とネットワークを築いておくことが理想です。
現地の役所や不動産屋に”移住したい旨”の相談すれば物件を優先的に紹介してくれます。また、何度も現地に足を運んでいろんな人と知り合いになることで、空き家情報は勿論、そのエリアに関する裏事情までいろいろ教えてもらえるようになります。
参考記事
ここでの注意点は、あくまでも自分で住む(移住定住)前提で話をすること。結果的に他の誰かに売る(貸す)ことになったとしても拒否されることはあり得ません。それはそれで喜んでもらえます。最初から投資目的だと言うと警戒されます。無論、投資用ではなく自分の住居用に探している人は何も問題ありません。
購入手順2:物件の内覧
気になる物件情報を見つけてたら、現地で実際に物件を検証します。検証方法は以下の通りです。
・建物の傾きを確認
・屋根の状態を確認
・家の周りを確認
・家の湿気を確認
・水道や電気設備を確認
・電話回線と電波状況を確認
・ゴミや廃材など処分物の確認
etc.
特にチェックが必要なのは「屋根」です。屋根の修繕は金額的にデカイので、基本的に複数箇所雨漏りしているような物件はNGです。一箇所くらいならOKですが、その程度にもよります。
空き家を購入する際の事前チェックポイント〜判断基準を記します。
田舎暮らし用に地方の空き家を購入する際の事前チェックポイント
チェック1:立地
まずは立地です。
生活に便利な立地であることは、不動産物件にとって最大の価値と言っても過言ではありません。
しかし、格安な土地、格安な一戸建て物件は、不便な立地に在るものです。一般的な価値基準とは異なる視点で判断しましょう。
例えば、眺めが良い、海が近い、敷地内に清流が流れている、近隣に誰も住んでいない、静か、などなど、不便だからこその魅力があります。また、茅葺き屋根の古民家など建物自体に魅力がある物件もあります。
もちろん、不便な立地であっても、コンビニやスーパー、ホームセンターが近くにある、病院やドラッグストアが近くにある等、出来るだけ生活しやすいほうが良いので、どんなライフスタイルになるかを想像ながらチェックしてください。
また、住居としてではなく、古民家カフェなどの飲食店や、ギャラリー、アトリエ、オフィスとしてリノベーションすることで、その地域にあたらな価値を創り出すことも可能になる物件であれば、視認性やクルマの出入りのしやすさ、何台分の駐車場が確保できるか等をチェックする必要があります。
チェック2:建物
次に、チェックすべきは建物の状態です。
建物の状態についての詳しい確認は、建築家や工務店など専門家に同行してもらい一緒にチェックしてもらうのがベターです。
しかし、まだ正式に購入することを決めた物件でもなく、リノベーションなど工事を依頼するかも未定なので、知り合いでもない限り同行してはもらえません。その場合は、以下を参考に自分でチェックし判断してください。
□建物が傾いていないか
まずは、外観上建物が傾いていないか確認してみてください。これは目視で構いません。
次に、部屋の中で傾いていないか確認してみてください。水平器やレーザー水平器があればベストですが、パチンコ玉やビー玉を転がしてみると傾きがわかります。
建物が傾く原因として考えられるのは、
①地盤沈下
②シロアリ
③木材自体が乾燥伸縮
などです。
①が原因だと厄介です。地盤〜基礎からやり直すことになります。
②③が原因であれば、その箇所を修繕すれば問題ありません。
判断基準としては、外観上が傾いているのはハッキリわかる、部屋の中で立っているだけで傾きが体感できる、そのくらい傾きが酷い物件はNGです。
古民家や築古物件の大半は必ず傾きがあります。酷い傾きでない限り気にする必要はありません。
どんなに傾いていようが、原因が何であろうが、修繕することは可能、でも、傾きが酷いと修繕費用がかかり過ぎるので、どんなに格安物件であっても諦めましょう。
□屋根の状態を確認する
次に、瓦が落ちていないか、雨漏りの形跡がないかを確認してください。
瓦が落ちていたり、屋根の一部が剥がれたりしている場合は、雨漏れが起こっている可能性があります。
屋根のチェックがしにくい場合は、部屋の中に雨漏りの形跡がないかを確認してください。
雨漏りがある物件は屋根の修繕が不可欠です。屋根の修繕はDIYレベルでは難しいので専門業者に依頼することになりますが、家の工事の中でも屋根の工事は結構な費用そして時間が必要になります。
また、雨漏りをしている物件は、構造材が腐食し取り返しのつかない欠陥が出ている恐れもあります。
屋根のチェック(雨漏りのチェック)は特に入念にしてください。
□床や壁の状態をチェックする
雨漏りは屋根からだけとは限りません。
床や壁にシミがあったりする場合は、雨漏りなど水の侵入の可能性がありますので確認ください。
床や壁からの雨漏りであっても、構造材に影響すれば大改修工事が必要になります。
チェック3:家の周りを確認
空き家物件を確認する際には、建物だけではなく庭や家の周りも確認してください。
特に、家の周りで「水はけ」が悪い箇所がないかを確認しましょう。
家の周りの「水はけ」が悪いと家全体が湿気ってカビの原因になります。また、木材が腐食しシロアリが発生しやすくなりますので、その場合はリノベーション工事の際に、湿気対策を施す必要があります。
また、家の周りや庭に廃棄物などが放置されている、または埋まっていることも少なくありません。
そのまま購入を決めてしまうとこちらで処分することになり、手間と費用がかかりますので、あらかじめ売主に確認し、どちらが処分するかを決めておきましょう。
田舎暮らし用に地方の空き家を購入する際の判断基準
基本は、出来るだけ修繕や改装費用かからない物件、もしくは、修繕や改装(リノベーション)すれば魅力的になる物件であれば、買いです。
時間があればいろんな場所に出向き内覧しまくりましょう。数を見ることで良し悪しが分かるようになりますし、比較して買うことが可能になります。
家の購入は大きな買い物なので、何戸も頻繁に買えるわけではありませんし、すぐ簡単に売れるものでもありません。良い物件との出会いは”縁”もありますから、自らが積極的に動くことが大切です。
購入手順3:収支計算
正式契約する前に、当然損得計算をします。採算が合うかの検討です。
※投資用ではなく自分の住居用に探している人は不要かもしれませんが、後に売却する可能性もあるので収支計算しておくのは賢明かと思います。
物件の購入費用と改修・改装(リフォーム〜リノベーション)費用を基に、幾らで売るか、幾らなら売れそうか、をシュミレーションするのです。
基本的に利益は20%以上になることが理想です。
例えば、
物件価格100万+諸経費20万+リノベーション費用200万=320万円
→売却であれば価格384万円(利益20%)
→賃貸であれば家賃5.5万円(表面利回約20%)
リノベーション費用については検討段階なのでザックリで良いのですが、初めての方だとリノベーション費用は専門家に見積もりしてもらう必要があります。(何度か経験するとザックリと算出できるようになります。)
利益をいくらに設定するかは自由です。中には40~50%もしくはそれ以上の利益をとる人、その位の額をとれる物件も存在します。ただ、あまりにも相場からかけ離れた価格(高値)で販売することは、いくら買ってくれる人がいたとしても良心的ではありません。
購入手順3:融資
自己資金で購入するのであれば不要ですが、不動産投資は金額が大きいので金融機関の融資を利用することが大半です。
戸建て物件は、建物と土地が担保になる為、通常は融資が通りやすいのですが、「築古」「古家」「ボロ家」「廃屋」の「空き家」物件は担保に値しないため、基本的には融資されません。
なので、自己資金を投じるか、空き家活用プランや事業計画、そして過去の実績などの資料を用意して金融機関を説得する(納得させる)必要があります。
※投資用ではなく自分の住居用に融資を受ける際も同じです。但し、事業用ではないので単に収入で判断されます。
金融機関を説得する際には、以下の資料を準備してください。
◎金融機関融資申込時の資料例
・物件の情報(間取り、場所、価格が必須)
・過去の実績(リノベや空き家活用事例、仕事の実績)
・過去3年分の決算報告書または確定申告書、収入証明書
・購入物件の事業計画書、活用プラン ※自宅用であれば不要
・今後の事業計画書 ※自宅用であれば不要
上記はあくまでも例です。説得できる材料を紙(文字や画像)で提出できれば良いのです。
資料が用意できたなら、まずは物件最寄りの金融機関に申し込みましょう。1週間程度で回答が来ます。NGであれば、最寄りも別の金融機関、そこもダメなら日頃使っている金融機関へ、そして最後は日本政策金融公庫に融資の申し込みをしてみてください。
借さない(NGの)理由は教えてくれませんので、NGなら次々と金融機関を変えて申し込みましょう。
自分の見立てとプラン(計画)に自信があれば「国の補助金・助成金」「クラウドファンディング」という手法もありますので諦めないことが肝心です。
そのためにも、空き家活用プランや事業計画はしっかり熟考し作成する必要があります。プラン段階で自分自身でNGとするケースもあるでしょうから、とても大事な工程です。
購入手順4:専門家の手配
実際に購入を決めたら売買契約を行います。その際にはさまざまな専門家の手を借りることになります。
不動産売買時に関係する専門家は、
・不動産仲介業者(宅建業者)
・所有権移転登記、抵当権設定など (司法書士)
・土地建物登記 (土地家屋調査士)
・資金 (金融機関)
などです。
購入するだけなら個人売買も可能ですが、大きなお金が動くことと、行政手続きもあるので、専門知識が必要。なのでそれぞれの専門家を手配する必要があるのです。
基本的には、宅建業者(不動産仲介業者)に一括してお願いすれば全て手配してくれますが、格安物件だと仲介を断られるケースも少なくありません。そんな時は以下のサービスがおすすめです。適任の専門家を紹介してくれるサービスです。
◎法律相談サポート(公式サイト)>>不動産契約を専門家に相談する
購入手順5:不動産売買契約
不動産売買契約は、通常、売主・買主の当事者の他に、仲介をする宅建業者(不動産業者)、所有権移転登記を行なう司法書士が立会い、融資元金融機関の一室を借りて行いますが、田舎の格安物件の取引だと、自己資金で現金一括払い、個人間取引となるケースもあったりと、物件次第、売り主次第でスタイルは様々です。
しかし、いくら格安物件とはいえ、不動産の取引は、普通の買い物とは異なり金額も大きい契約事ですので、必ず専門家立会いのもと、物件の重要事項説明を受けて売買契約を進めてください。
PR)専門家の手配はこちら(↓)
>法律相談サポート(公式サイト)>>不動産契約を専門家に相談する
契約が成立したら物件の鍵を受け取り、実際に現場を再度確認。問題がなければ取引完了です。
登記簿上の所有権の移転登記を行い、後日、新しい登記識別情報を受け取ります。
以上全てが完了して、ようやく物件が自分のものになります。
以降、自分で住むことは勿論、売却する(または賃貸する)ことも可能になります。
まとめ(プロの視点で空き家を購入すれば損はしない)
空き家物件はプロの視点・プロの基準で購入することをおすすめします。
不動産投資のプロの視点でチェックし購入することで、自分が住んでも損しませんし、飽きたら売却(賃貸)し収益をあがることも可能になります。
投資用でも自分用でも、家の購入はとても大きな買い物です。なので、とにかく慎重に売買を進めなければなりません、が、しかし、専門的なことが多すぎるので、業者にお任せで、ざっくりと判断してしまう人が殆どです。
上記と合わせて、家の購入、新築やリフォームなど家の工事を依頼する前に知っておくべき基礎知識があるので、是非お読みいただければと思います。有料ですが一部NOTEで公開しています。無料部分だけでもご参照頂ければと思います。
参考NOTE